連続合成桁へのケミカルプレストレス適用の研究

ケミカルプレストレスとは

セメントに膨張材(石灰系)を用いた膨張コンクリートを使用し硬化時のコンクリートの膨張が鉄筋などで拘束されることにより発生する初期応力をケミカルプレストレスと呼びます。当社ではこのケミカルプレストレスに着目し連続合成桁に積極的に適用する方法を提案しています。

連続合成桁では床版の乾燥収縮補償用に、膨張率200μ(30kg/m3)程度の膨張コンクリートを使用することがあります。構造性、経済性を考慮し、その膨張率を600μ(55kg/m3)程度と設定し施工することにより、設計上十分評価できるプレストレスが期待できます。

ケミカルプレストレスの計算方法

ケミカルプレストレスは、膨張コンクリート設計施工指針(土木学会)を基に鉄筋の拘束によるケミカルプレストレスの計算式と鋼桁の拘束によるケミカルプレストレス(道示の合成断面の計算式)を重ね合わせて算出します。

※ケミカルプレストレスを使用した連続合成桁および製造方法については、特許出願中です。
特願2000-181262 

ケミカルプレストレスの基本性能(試験桁による実験的確認99年3月~)

  • 普通コンクリートと比べ膨張コンクリート使用により床版のひび割れ発生荷重が増大
  • 膨張コンクリートはひび割れ制御に効果的
  • 膨張コンクリートとジャッキ操作による組合せは、より効果的なプレストレスの導入が可能(ひび割れ荷重を活荷重合成時のレベルまで上げられる)
実験条件
  プレストレス
目標 N/mm2
ひび割れ発生
荷重 kN(予想値)
実験桁A 普通コンクリート使用 0 255(207)
実験桁B 膨張コンクリート使用 2.4 519(481)
実験桁C 膨張コンクリート+ジャッキ操作 5.2 813(780)

* 実験桁:桁長10.6m 桁高1.6m
* 膨張コンクリートは、配合試験を行い、膨張材を55kg/m2投入し、
養生温度10~20℃(膨張率600μ 鉄筋比1%)で施工
* コンクリートの引張強度 3.0N/mm2

比較計算によるケミカルプレストレスの効果

3径間連続合成2主桁橋(橋長140m)を対象とした場合のケミカルプレストレスの導入量比較。
>> 設計上の数値として評価可能

経済性

3径間連続合成桁をモデルに他形式の試算

ケミカルプレストレス ・・・・・・・桁全体で約400万円の増
PC鋼材によるプレストレス ・・・・・桁全体で約1,200万円の増

試算条件)
ケミカル:有効プレストレスを約3N/mm2。膨張材により単位体積当りの増加がm2当り5,000円。
PC鋼材:有効プレストレスを0.8N/mm2、桁全体に10,000kNの軸力を導入が必要。

発表資料(抜粋)

  • 岡田,細見,依田,佐久間:連続合成桁へのケミカルプレストレスの適用,土木学会第54回年次学術講演会講演概要集,CS176,pp.352-353,1999.9. 
  • 岡田,細見,依田,佐久間:連続合成桁へのケミカルプレストレスの適用,構造工学論文集Vol.46A,pp.1675-1684,2000.3.
  • 谷口,依田,岡田,細見:ケミカルプレストレスを用いた合成桁に関する基礎的研究,土木学会第55回,CS-31,2000.9.
  • 中本,石川,岡田,細見,佐久間隆司:長期計測による連続合成桁へのケミカルプレストレス適用に関する研究,構造工学論文集,Vol.47A,2001.3

ページトップ